極楽戦争 - End of End 著・富士見永人

 第六章「最終戦争」

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 ぱあん、という小さく乾いた音が、唐突にぼくの鼓膜をたたいた。
 同時に帝の眼が大きく見開かれ、その顔があさっての方へと向いた。
「なんだ」
 帝の白いスーツの右脇腹が裂け、その下の防弾チョッキが顔を覗かせていた。
「ち。防弾チョッキか」
 帝の視線の先には、拳銃を構えた霧崎が立っていた。
「ああああ」

 帝のその首に埋没する、ぼくの銀色の刃。

 彼の口から現れる、無数の赤いライン。
 ぼくの腹の中の手がまた暴れだしたが、すでに痛みを通りこしてしまったのか、体の中をごりごりとかき回されるあの気色の悪い感触だけが、伝わってきた。
「ごぼがぼ」
 帝はそのまましばらく呻きながら手足をばたつかせ、最期の最期までぼくを道連れにするべく、必死にもがき続けていた。右手に持っていたサーベルでぼくを切りつけようとしたものの、力が入らないようだった。
 ぶつり、と、何かを切り裂いたというよりは引きちぎったような感触が、ぼくの手に伝わってくると、帝の首から赤い飛沫が一気に噴きだし、ぼくの顔を染めあげていく。
 パンクしたタイヤから段々と空気が抜けていくかのように、徐々に、彼の四肢の力は抜けていった。
 そしてついに、彼の鼓動は、停止した。

 

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